狩魔親娘と御剣親子(2終了・3シナリオネタバレ)





1 御剣信はウソをついたか

霊媒師・綾里舞子は、犯人を「灰根」だと名指ししました。
しかし…それは真実ではなく、灰根は犯人ではありませんでした。
御剣信はウソをついたのか?それとも綾里舞子が失敗したのか?
霊媒師である綾里舞子が失敗したとは…考えられませんし、作中の扱いでも、これは失敗していないのだろうということがわかります。ということは、原因は御剣信の方にあるわけで。一体どういうことなのか?
これは二つの結論が考えられると思います。

ひとつめ。御剣信はウソをついた。
当時の状況は、密室のエレベーターに人が三人。御剣信・灰根高太郎・そして息子の怜侍。
酸欠で薄れ行く意識の中で、御剣怜侍がピストルを投げて、ピストルが暴発する音がする。そしてしばらくしてから自分の意識は闇に消えた…。エレベーターの向こうに狩魔豪がいたことなど誰も知らないわけですから、自分は息子の投げたピストルの暴発によって死んだのではないか、と思っても不自然ではありません。だから息子をかばうために犯人は灰根だと名指しした…。
…父親として息子を思う気持ちはわかりますが、無実の相手を犯人にしてしまってはイカンだろう、という話だなあ。

ふたつめ。御剣信はウソをついてない。
御剣怜侍がピストルを投げた時点では、御剣信と灰根は言い争っていたわけです。つまり、まだ二人とも朦朧とはしているが意識がある。そうすると、ピストルの暴発が起こった時にその弾が当って自分が死んだわけでないということは御剣信にもわかるはずです。しかし、自分は死んでいる。とすると…その後に誰かに撃たれたのではないか。狩魔豪のことなどわからないわけですから、そうなると自分を撃ったのは灰根でしかない…と思うのは自然でしょう。
私としては、こっちの方をとりたいですが…難点が一つ。それは、時間の問題。

狩魔豪の台詞によると、弾が肩に当った後に「そのとき・・・・電力が回復した。目の前でドアが開いた」「三人の人間がいた。彼らは酸欠で気絶していた」とあります。
御剣怜侍がピストルを投げた時には三人とも意識が合った。しかし直後、狩魔豪が見た時には三人とも気絶していた。この間に、時間はあまりなかったと思われます。
ということは、ピストル暴発の瞬間に三人とも意識を失ってしまったということになるのでしょうか。もしそうだとしたら、御剣信がウソをついたかどうかを解く鍵は、ただ一点。
自分がピストル暴発時に、撃たれたのかそうでないのかを認識していたか、ということです。
撃たれたかどうかというのは痛みや出血などでわかるような気もします…実際撃たれた狩魔豪は「焼きつくような痛み」を感じているのですし、最初から気絶しているのならともかく、朦朧とはしていても意識があるのなら、わかるような気もします。
私は朦朧とした意識の中で撃たれたことがないので、はっきりとは言えません。でも、できれば、こちらの説を取りたいと思うのですよ…いくら息子のためとはいえ、関係のない人を告発するなど…イヤな話ですからね…。



2 狩魔豪は何故御剣怜侍を育てたか

これはもう、最初から御剣信への復讐のためだったと思います。
15年の時効(現実では過失致死は3年で時効なのですが、そこはつっこまないでおきます←笑)の直前に灰根に復讐をもちかける…というのも、突然思いついたことだとは思えません。最初から、罪を御剣怜侍に押し付けて自分はカンペキに退場、という計画をたてていたのではないでしょうか。
御剣を狩魔風に検事として育てたのも、同じ理由から、御剣信への復讐でしょう。
御剣信は、狩魔のやり方を心から嫌って、それを暴こうとしたわけです。その御剣信の愛息を、父親が心から嫌った狩魔の色に染め上げる…復讐としては最高の形ではないでしょうか。
父親の事件がトラウマになって、御剣怜侍が犯罪者を憎むようになったことも知っていたでしょうし、もちろんそれが誤解に基づいていたこともわかっていた。そして御剣怜侍の心の底の悪夢にも気付いていたのでは…灰根へもちかけた計画、それは御剣の罪の意識さえも計算したものであったでしょうから。生倉殺しで御剣怜侍が有罪になれば良し、もしトリックを見抜かれても、御剣怜侍に15年前の罪を告白させれば彼の御剣親子への復讐は完成するわけです。おそらく、御剣怜侍の煩悶、それさえも楽しんでいたのではないでしょうか。
彼は自分の体を傷つけた御剣怜侍自身も恨んでいたわけですし。
そう考えると、ほんっとにしつっこいですな(笑)。オヤジを殺しただけでは足りなかったようです。
検事として出会ったが百年目、舌なめずりをして復讐の機会をうかがっていたのでしょうかね…。恐ろしや。


3 冥にとっての御剣怜侍

彼女はアメリカ生まれのアメリカ育ち。そしてアメリカの検事です。狩魔豪は日本の検事ですし、たとえ日本で彼が天才だったからってアメリカでも名声を博しているかは…いえ、やめておきましょう。こういう世界観のツッコミは無粋ですので(笑)。
彼女はずっとアメリカにいたでしょうし、一方で御剣は日本にずっといたはずです。狩魔豪に師事したとしても、娘の冥とそんなに行き来があったとは思えません。偶然なのか必然なのか検事になったのは同じ年。仕事が忙しいでしょうし、冥がアメリカと日本を頻繁に行き来できるとも思えません。なのに、彼女の御剣へのライバル意識はある意味異常といえるほど強い。不思議なほどです。

私が思うに、彼女にこのライバル意識を植え付けたのは…狩魔豪なのでは。
御剣は天才と呼ばれていました。検事の天才ってなんだろう?とかいうつっこみは置いておくとして(笑)、まあ天才だったのでしょう。狩魔豪にとっては御剣怜侍がどんどん自分の色に染まっていくことは復讐の一環であり、望ましいことであったはずなのですが…彼が自分の娘よりも優秀であるということは許せなかったと思います。
たとえ自分ではなく、娘であっても、それはまたしても『狩魔』が『御剣』に負けることであるから。それは狩魔豪にとってどんなことがあっても認められず、許容できない、あってはならないことだったでしょう。
わざと負けさせるとかミソをつけるとかして御剣の足を引っ張ることはできません。何故なら、御剣怜侍は公的には狩魔豪の『弟子』であり、冥曰くの狩魔一族(ってなんだよ一体)であるため、御剣怜侍の失敗は、すでに狩魔豪とは無関係ではありえない。

ここに、狩魔豪のジレンマがあったのではないかと思います。自分の弟子である限り御剣怜侍は優秀でなければならない…しかし仇の息子が『狩魔』をしのぐほどに優秀であることは許せない、というジレンマ。

このジレンマを解消するために、自分の娘である冥が御剣怜侍に決して負けないことは絶対に必要だったのです。7歳の年の差など、狩魔豪には言い訳にならなかったかもしれません。ことあるごとに、御剣怜侍を引き合いに出して冥にハッパをかけたのでしょう。
父親に依存し、支配されていた冥にとって、彼に認められることは自分のアイデンティティそのものである。そして、狩魔豪に認められるためには、御剣怜侍に勝たなければいけない、決して負けてはいけない…強迫観念のように彼女にその思いが付きまとったのではないでしょうか。
冥にとって、御剣に勝つこと、御剣より自分が上であることを証明すること…それは、父親に依存している間の彼女にとっては、どうしても必要なことだったのでしょう。もはや、冥にとって御剣怜侍というのは、とてつもなく大きな存在だった。
だからこそ、冥は御剣にこだわったのです。なるほどくんに勝つことで「世界中にニュースが」と言うのは、世界のどこにいるかわからない御剣を探すためらしいですし…彼女はどうしても御剣に会わなければならなかった。彼の生存を固く信じ、彼の敗北をあそこまで憎んだのは、自分の人生を、アイデンティティを脅かし続けてきた彼が、簡単に彼自身や彼の今までの世界を捨てていってしまうことなどありえないし許せない、という思いからではないでしょうか。
それに…自分にとって御剣怜侍は捨て去れない大きな存在であるのに、御剣怜侍にとって自分は、簡単に捨て去れる存在であるということを認めてしまう事にもなるから。
こっちが大きな存在だと思ってるのに歯牙にもかけられていないことほど、腹が立つ事はないと思います(笑)。特に、アイデンティティまで賭けている場合は。

それにしても自分の父親が犯罪者だったと知り、しかも殺した相手がこともあろうに御剣の父親だったと知った時、彼女は何を思ったのでしょうか。
ゲームでは1のネタバレになるためか、そこらあたりの事情は驚くほどきれいさっぱり書かれてませんが…おそらく、御剣は冥につらくあたることもなく、むしろ思いやったのでしょう。そうだとしたら冥にとっては逆につらかったかもしれません。自分は御剣怜侍に一生消えない借りがある、と彼女の性格なら思い込みそうです。しかも本人が許してしまった以上、決して償えなくなってしまったのですから。ある意味、一生彼に勝つことはできない…。
それとも、もう父親と自分は全く別だと割り切ってしまったのでしょうか。決して語られることはないでしょうが、気になるところです。



続く


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